台湾でリアルもECも売り切れ続出!日本紹介メディア「FUN! JAPAN」の施策がうまくいくワケ

 「FUN! JAPAN」は、東南アジア(インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム)・台湾・香港・インドを対象とした、アジア屈指の日本紹介メディア。ウェブ会員は92万人以上、Facebook会員が465万人と日本好きが集まる一大コミュニティになっている。「アジアと日本の架け橋になる」を企業コンセプトに掲げている株式会社Fun Japan Communicationsの代表取締役・藤井大輔氏に、越境ECの現状と成功するためのポイントについて聞いてみた。

EC-zine(2019/06/05)より

「FUN! JAPAN」に聞く!帰国後ECでリピートしてもらうには

――現状、越境ECで成功している企業はまだまだ少なく思えます。越境ECはさらなる可能性はあるのでしょうか?

おもしろいデータがあります。弊社が運営する日本紹介メディア「FUN! JAPAN」の会員データを見ると、「日本好き」というのはもちろんですが、日本を訪れた回数が多ければ多いほど、自国に帰ったときに日本製品を買う確率および購入額が高い傾向が出ています。つまり、訪日回数と自国での日本製品のショッピング回数には相関性があるということです。

ということは、海外で日本の製品を販売する際には、日本に来た回数が多い外国人をしっかりつかまえておくことが重要です。一度日本を訪れた外国人と、いかにつながりを持ち続けておくかがポイントになります。2018年度の「訪日外国人消費動向調査」ではの訪日外国人旅行消費額は4兆5,064億円でした。旅ナカの一過性の消費額だけでなく、旅アトもしっかりとつながり続ければ、継続的な大きな消費額につながるのはおわかりでしょう。4.5兆円はあくまでも日本を訪れて消費した一過性の額ですから。

株式会社Fun Japan Communications 代表取締役 藤井大輔氏

――自国に戻ってからも日本商品を買おうという人たちはどれくらいいるのですか?

「日本好き」であるFUN! JAPAN会員にリサーチを行った結果、自国のECサイトで1回でも日本製品を購入したことがある人は、台湾がもっとも多く79%、次いでマレーシア58%、タイ43%、という結果が出ました。また5回以上買ったことがあると答えた人は、台湾とベトナムでそれぞれ47%、32%ととくに高くなっています。

また、日本での旅行中に買うもの・買ってみたいものを聞いた際には、化粧品や医薬品、食品、衣類といったものが上位に入ってきました。訪日中に購入したものが帰国後の購入に結びつくケースが多いため、帰国後もこのような日本製品を求める傾向にあると考えられます。

――各国の人々は日本の商品を買う際、どのようなECサイトを使って購入しているのですか?

「日本の商品をどのECサイトで購入しますか」というアンケートを行った結果、タイ、マレーシア、ベトナムで共通するのが東南アジア最大級のECサイト「Lazada」です。

一方、インドネシアでいちばん多かったのは「Shopee」。インドネシア他、ベトナム、台湾でも3位にランクインしている急成長中のECサイトです。Shopeeがローンチされたのは2015年と、他のECサイトと比較しても後発であるものの、現在も急速に成長を続けており、あの中国大手メッセージアプリ「WeChat」を手掛けるTencentも出資者に名を連ねています。Shopeeではハッシュタグを盛んに使用しており、SNS感覚で広がりやすいという特徴もあるようです。

香港と台湾でもっとも多かったのは「Rakuten」。ほかにもマレーシアで2番目に多い「11street(イレブンストリート)」は、マレーシアローカル系の中でももっとも利用者が多いECサイトです。

インドネシアで2番目に多い「Bukapalak」は、インドネシア発のユニコーン企業で、Bukapalakはインドネシア語で「屋台」を意味し、農家や個人経営者などの小規模な企業も出店に積極的で、ポテンシャルの高いECサイトです。

日本の商品をどのECサイトで購入しますか?「FUN! JAPAN」調査

  • タイ、ベトナム→Lazada
  • マレーシア→Lazada、11street
  • インドネシア→Shopee、Bukapalak
  • 香港、台湾→Rakuten

リアルでもECでも売り切れ続々!台湾への越境EC成功例

――これだけのECサイトがあると、どこの国をターゲットに展開していけばいいか迷ってしまいます。実際、どの国をターゲットにすると結果が出やすいでしょうか?

それぞれの企業の戦略もあると思いますが、やはりよく言われているのは台湾でしょうか。訪日外国人全体の中でも台湾人観光客は、リピーターが全体の80%を占めています。さらに観光目的で4回以上来日している人は50%近くいます。他国と比べても熱心な日本好きが多いことがわかります。先ほどもお話しましたが、訪日回数は、日本製品を購入する頻度に比例していきます。それを考えると台湾は外せない国だと思います。

――台湾の方は主にどのようなものを購入するんですか?

とくにドラッグストアの商品は人気があります。薬(頭痛薬・湿布など)、歯磨き粉、洗顔料などの薬用品で、具体的には「アリナミンEXプラス」(270錠のサイズがポイント)「新ルル-A錠S」「イブA」「強力わかもと」「パブロンゴールドA」「太田胃散」「ビオフェルミンS」など。これらは台湾でも販売されていますが、「日本の成分は台湾と違う」という噂(笑)があり、わざわざ日本で買う人が多いようです。

また、台湾人は「限定」の言葉に敏感で、北海道の「ロイズチョコレート」「じゃがポックル」、「ガトーフェスタハラダ」のラスク、沖縄の「石垣島のラー油」、コンビニ限定の抹茶チョコレートなど地域や期間限定のお菓子はたいへん人気があります。

最近のトレンドとしては、東京土産なら「PRESS BUTTER SAND」「NEWYORK PERFECT CHEESE」。大阪土産なら「りくろーおじさんの店」のチーズケーキを1ホール買って帰国する人もいるほど大人気で、台湾で類似店ができたほどです。関西国際空港で売られている「呼吸チョコ」は、台湾人ブロガーがこぞって取り上げています。

そのほか資生堂、「雪肌精」「アネッサ」など日本の大手ブランドの化粧品は人気が高い傾向にあります。日本の調味料も人気で、以前とったアンケートでは、味噌、醤油、ワサビの順で好きな人が多い結果になりました。

もちろんこれまであげた商品は一例ですので、いろいろチャレンジするといいでしょう。

台湾からの訪日観光客に人気の商品

  • ドラッグストアの商品、薬(頭痛薬・湿布など)、歯磨き粉、洗顔料など
  • 地域や期間限定のお菓子
  • 大手ブランドの化粧品
  • 日本の調味料

――台湾人向けに成功したECサイトの事例などありますか?

ある企業様のECサイトにおける海外プロモーションのお手伝いをさせてもらった話ですが、台湾の方を対象に商品の人気投票を行い、その結果をもとに商品を絞り込んで台湾のFUN! JAPAN会員に情報配信したところ、コミュニティ内で人気商品となったのが、江戸切子の「富士山ロックグラス」という商品でした。

職人がひとつずつグラスの下部に富士山を彫っているため1ヵ月に100個くらいしか作れないのですが、手彫りならではの作りかたが絶妙で、青いドリンクを入れたら富士山の山肌が青色になり、赤の飲み物を入れたら赤色に変わるというものです。こういう細かい説明をFUN! JAPANの記事や動画で掲載しましたところ、在庫がすべて売れてしまいました。また、元々は1種類しかなかったのですが、季節バージョンや4個セットなど限定感の高い商品にした結果、それも次々に売れていきました。

さらに台湾のデパートで実施した18日間の催事では、開催期間中の在庫を持参したところ5日間で売り切れてしまい、売れ切れ後は、「ECサイトでも買えます」という案内を出したところ、ECの売上も伸びるという結果につながっています。

福岡県の事例に学ぶ 訪日観光客と長期的な関係を築くには?

――事例を聞く限り、単なるメディア広告ではなく、コミュニティを使った具体的なデータをもとにコンバージョンにこだわるサービスを展開されているのがよくわかります

私たちはアジア地域のコミュニティを持っているので、アンケートをとろうと思えば、各国のデータが1日~2日で数千件は集まります。単なるメディアではなく、コミュニティを持っていることが我々の最大の強みです。しかも、FUN! JAPANの会員は、「日本好き」で訪日のリピーターであり、1年以内に日本に行く予定が決まっている方が大半です。このコミュニティを使い、テーマ別の現地座談会の実施、協賛をいただいてのモニターツアー実施、Instagramを使った来店促進キャンペーン実施など、自治体様・企業様のインバウンドの取り組みや海外展開のお手伝いをさせていただいております。

たとえば、福岡県様からいただいたお仕事でInstagramを使ったキャンペーンを実施しました。福岡県を訪れる外国人の半分は韓国人の方なのですが、それ以外の国の方にも福岡県のことを知ってもらい、将来的には福岡県に来ていただきたいとのお考えでした。具体的には、アジアでも欧米でも認知度の高い『とんこつラーメン』福岡が発祥の地であることを知ってもらうことで、福岡の興味・関心を高め、将来的な誘客につなげるというシナリオで実施しました。

詳細は、外国人の方が福岡県から海外進出しているとんこつラーメン店に行った際に、自身のInstagramで店舗やラーメンの写真を「#fukuoka_tonkotsu」でアップしてくれた人たちの中から8人を選定し、福岡に招待する施策を実施すると同時に、Facebookを立ち上げ、福岡県のファンづくりを実施しました。

結果としては、3ヵ月間のキャンペーンに1万人が参加し、その1万人が自身のSNSで拡散してくれたので、数百万人に情報を共有することができたと同時に、福岡県のFacebookファンを5ヵ月で5万人獲得することができました。この取り組みを翌年も継続し、今では10万人近いファンを獲得することができております。このファンは、福岡県を来訪する可能性の高い見込み客であり、福岡県の産品を購買してくれる可能性の高い見込み客であると言えますので、このファンに対して継続的なアプローチを行い、訪日や購買につながる顧客になってもらい、さらにリピーターになってもらうことで、継続的に福岡県の経済に貢献するコミュニティを確保することができます。

我々は、単にプロモーションを行って終わりの「砂漠に水」状態の広告展開ではなく、クライアント様にとって将来的な財産が残るような提案を常に考えています。

――Fun Japan Communicationsとして、今後はどのような展開をお考えですか?

現在、弊社のサービスは大手企業様や自治体様に主にご利用いただいております。今後は、日本をもっと元気にするうえでも、中小企業の皆様がもっと簡易に海外の消費者に日本の良い製品・サービスを提供できる仕組みづくりが必要だと思っています。

そこで我々自身で中小企業様も参加できるようなプラットフォームの構築を図って参ります。今は、当社のコミュニティを活用したマーケティングサービスを提供していますが、今後は外国人消費者と日本の企業様・自治体様との懸け橋になり、双方にとって高い価値が得られる仕組みづくりにチャレンジしていきたいと思っています。

現状では、多くの地域企業様が旅ナカでの消費獲得を目的に受け入れ環境の整備やプロモーションに苦心されている中、我々は、訪日前や訪日後の外国人消費者にECサイトで日本製品・地域産品を購入してもらうことで、地域企業が潤うような新たなサイクルを構築したいと考えています。(了)