「動画」のプレスリリースなら世界に届く 50言語対応ビジネスワイヤに聞く

 世界200ヵ国のメディアに、50言語対応でプレスリリースを配信するビジネスワイヤ・ジャパン株式会社。親会社はアメリカにあり、世界的に有名な投資家、ウォーレン・バフェット氏がビジネスワイヤの全株主でもある。サンフランシスコで1961年に創業し、世界最大手かつ老舗のワイヤ企業で、海外メディアからの信用も厚い。「今、世界のメディアは日本の情報を欲しがっている」と語る代表のパスカル・ロズィエ氏と営業担当の岩崎雄太氏に、日本企業の海外プロモーションの重要性について聞いてみた。

EC-zine(2019/01/09)より

世界のメディアは日本の情報を非常に欲しがっている

代表のパスカル・ロズィエ氏と営業担当の岩崎雄太氏

――「ワイヤ」という言葉は世界的には有名ですが、そもそもその言葉を知らない日本人はまだ多いと思います。

岩崎 日本では、企業がメディアに新製品などの情報を送ることを「プレスリリース配信」と呼びますが、海外では「ニュースワイヤ」と呼ばれています。日本企業様が、日本市場だけでなく海外に向けてもアピールする時代になりました。その方法のひとつとして、当社を通して、海外メディアに発信するという選択をされているようです。

――他社にも同じようなサービスがあると思いますが、なぜビジネスワイヤさんが選ばれているとお考えですか?

岩崎 当社は元々、アメリカのサンフランシスコで1961年に創業しました。当時はFAXもなく、テレックスと呼ばれるもので政府、企業、団体の情報を発信しておりました。業界内では世界最大手、老舗企業のひとつとしてサービス提供させていただいておりますので、メディアからも「ビジネスワイヤからの情報は信用できる」と受け止めていただいていると思います。現在、200ヵ国、50言語に対応しております。

――200ヵ国のメディアに50言語対応でニュースを発信できるということはすごいことですね。

パスカル 私もまだ当社に来て間もないですが、スタッフのメールを見た時には驚きました。オランダ語やドイツ語などあらゆる言語の文章でやりとりをしていたので。

岩崎 基本的なやり取りは英語で行っているのですが、配信される文章に関しては、それぞれの国の言語対応をしているので、あらゆる言語が飛び交っています(笑)。

パスカル 今、世界的な日本ブームが到来しています。もっとも注目されている国は日本と言っても過言ではないです。その理由は、私の個人的な意見ですが、他国が失った「古き良き文化」が日本にはまだ残っているからではないでしょうか。文学、マンガ文化、盆栽、お茶、お花、武術は世界でも人気です。私はフランス人ですが、フランス人は日本に対して深い尊敬を持っています。フランスも昔からの文化を大切にするので、日本の文化を見ると感動するようです。加えて日本は清潔で、治安も良く、おいしい料理もあります。こうした理由から、「一度日本に行ってみたい」と思っている外国人は非常に多いと思います。これだけ日本は世界から注目されており、世界のメディアも日本の情報を非常に欲しがっているのに、日本企業様は世界に向けてうまく情報発信ができていないと思います。

岩崎 情報発信はしていても、メディアが欲しがっている情報の書きかたをしていない企業様も多いです。

世界のプレスリリースは文字情報から動画の時代へ

――それでは海外へ向けてのニュースリリースの書きかたを教えてください。

岩崎 日本で使用したプレスリリースを直訳しただけでは、海外メディアには魅力的な情報に見えないようです。日本の企業様が作るリリースの多くは、スペック中心で書かれていることが多いです。メディアとしては、読者に対して「どういう手助けになるのか」を書きたいと思っています。

パスカル やはり、読者の観点から書くことが重要です。自分の伝えたいこと、書きたいことを書いていては、ズレが生じてきます。これが大きな失敗の原因です。さらに日本人は、「起承転結」が好きですね。アメリカ等では結論が先にあり、その後説明がある。この構成も重要です。

岩崎 文字のボリュームとしては、2,000文字以内がちょうどいいです。あまり長すぎても読まれないですし、情報が少なすぎるのもいけません。もちろん、写真を入れることも大切です。最近は動画が多いですね。

パスカル 日本人はまだまだ本を読みますが、海外、とくにアメリカでは文章があまり読まれなくなってきました。写真、動画が非常に好まれます。

岩崎 以前は紙の新聞に掲載されることが多かったのですが、今ではオンラインメディアに載ることが多くなってきているので、写真や動画のイメージが結果を大きく左右します。

――具体的に、日本企業の成功例をご紹介いただけますか?

岩崎 空港様が周辺観光情報サイトについて、都内ホテル様の日本文化のイベント(雛祭り)について、リリースを配信してプロモーションを行い、結果が出た事例がございます。ある地方自治体では、観光地としての訴求を行う動画の日本語版と英語版を作ったものの、アクセスが伸びずお悩みでした。当社では英語版のプロモーションを担当し、リリースを配信するなどして、日本語版の約50倍アクセスを獲得することができました。現在は、170万回再生を超えているかと思います。

パスカル 次の時代は、企業がポスティングした動画を、視聴者が観て消費するだけではなく、「好き」「嫌い」「興味ない」といったアクションを起こしてもらう、インタラクティブなやり取りが進んでいくでしょう。そのデータを取得し、より訴求効果の高いクリエイティブをポスティングすることも可能になっていきます。

日本の文化・観光地を楽しめるマニュアルは必要不可欠

――EC企業の事例はありますか?

岩崎 最近ではECサイト様からの問い合わせも多くいただききます。ファッション系、健康食品を扱うメーカー様が多いです。海外向けのECサイトを作ったにもかかわらず、なかなか売上が上がらないということで、海外に向けてプロモーションしたいという依頼です。

パスカル 健康食品は世界的にブームが来ていますね。とくに日本の健康食品のブランドは人気があります。また、スタートアップ企業では、起業当初から海外をターゲットにしているところも多いです。日本は投資に対して少し保守的であることから、海外をターゲットにして、海外から投資を募った方が早いと考える傾向があるようです。アメリカ、欧米は当社が得意としているエリアですが、最近は中国市場へのリリース依頼も増えてきました。中国市場は最も重要な国だと思っています。

――読者にメッセージをお願いします。

岩崎 海外へのプレスリリース配信(ワイヤ)は、100%掲載される保証はないですが、通常の広告費よりも費用が抑えられます。自社の製品、イベントなどを海外にアピールするのに利用されてはいかがでしょうか。

パスカル そうです、もっと日本をアピールしていきましょう! ひとつだけ言わせてください。もちろん私達は、日本を世界へアピールしていきたいと思っています。その結果、日本に訪れる外国人も増えるでしょう。その際に、観光地や日本を楽しむにはどうしたらいいか、マニュアルがあるといいと思っています。 

私が日本に来たのは1999年です。今では温泉が大好きで、湯沢温泉、鹿児島の砂風呂など日本全国の温泉に行きました。でも、最初に訪れたお風呂は横浜の銭湯(笑)で、お風呂の入りかたもまったくわかりませんでした。タオルを湯船に入れてはいけない、泡をつけたまま湯船につかってはいけない。そんなルールを外国人は知りません。

日本人は、外国人が正しいやりかたでお風呂に入らないと、不満に思いますよね? しかし、「これはダメ」という注意書きに対して、外国人はあまり気分が良いとはいえません。細かく注意事項ばかりを書くのではなく、もっと、イメージを駆使して伝えるツールがあるといいかと思います。

日本は本当に素晴らしい国ですから「日本の楽しみかた」を教えてもらえれば、外国人も楽しめますし、日本人も不満に思うことはないはずですよ。(了)