世界に負けないダイバーシティな強い組織を作るには?外国人向け求人サイト「NINJA」代表に聞く

 これまで「単純労働」という分野での外国人就労は原則禁止されてきた。早くて2019年4月から新たな法案が創設され、「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野を対象に外国人を「労働者」として正式に受け入れられる予定だ。また、外国人留学生が日本の大学以上を卒業し、年収300万円以上で日本語を使う業務に就く場合は、職種を問わず就労できるようにする法案も進んでいるようだ。この法案に関して、「外国人雇用協議会」は数年前から政策提言を行い、ようやく政府を動かすことに成功した。 その結果、各企業が外国人を積極的に雇用するチャンスが到来したのだ。 外国人雇用のメリット、未来、そして協議会の活動について、協議会の理事で株式会社グローバルパワー代表取締役の竹内幸一氏に話を聞いた。

EC-zine(2018/11/27 )より

外国人が加わると、世界に負けないダイバーシティな強い組織になる

外国人雇用協議会 理事/株式会社グローバルパワー代表取締役 竹内幸一氏

——外国人採用に関してはさまざまな意見が飛び交っていると思います。外国人雇用の必要性は年々高まっているのでしょうか?

竹内 これは私の考えですけれども、これだけ人口が減っていく中で、今後、日本という国が成り立たなくなっていくことはデータを見れば明らかです。今の生産年齢人口(15歳~64歳)は約7,500万人で、日本の総人口のざっくり半分近くです。この数字が年々減っていきます。そこで活躍し始めるのが、女性、シルバー、AI、ロボット、そして「外国人」です。外国人スタッフは、多数言語が話せる方が非常に多い。また、自国の商習慣や自国のマナーを理解しているので、その国をターゲットとしている企業は有利ですよね。さらに、外国人を採用することでダイバーシティが推進されることは間違いありません。たとえば、日本代表のラグビーチームを見てください。日本人だけで構成されていたら、あそこまで強くならなかったでしょう。さまざまな国の人たちがいることで、組織は強くなっていくのです。やはり、日本の組織が弱くなってきている原因のひとつが、同じような人たちが集まってビジネスしていることでしょう。それでは、世界のダイバーシティが進んでいる組織には勝てません。

――そんな中、竹内さんは「外国人雇用協議会」という団体を立ち上げました。立ち上げた理由やどのような活動をされているか教えてください。

竹内 2016年4月にこの「一般社団法人外国人雇用協議会」は設立されました。今の理事社には、ニトリホールディングス、サマンサタバサジャパンリミテッド、AOKIホールディングス、ネオキャリアなどがあり、大手民間企業様に参加していただいています。また、会員企業様も100社近くになりました。さらに、現・内閣官房参与でもある堺屋太一先生が当協議会の会長なんです。堺屋先生はすばらしいお考えをお餅で、何年も前から、外国人の受け入れを「官民学」でやらなければいけないとおっしゃっていました。そのお考えをきっかけに、真面目で質の高い外国人人材に日本で活躍してもらい、この日本を一緒に担ってもらおうという思いから、作り上げたのが当協議会です。

外国人雇用協議会の目的は3つあります。ひとつは求職者のブラッシュアップ。外国人求職者の日本で働く上で必要な日本の常識と日本式コミュニケーション力を図るテスト「外国人就労適性試験」を実施します。外国人求職者の方たちをレベルアップしていくのが目的です。サイト内にテストのサンプルもありますので、どうぞ閲覧してみてください。このテストは、外国人が自分で申し込みをして受験するのはもちろん、企業内外国人従業員研修ツールとしても使われています。

ふたつめは、企業もレベルアップしましょうという趣旨で、当協議会の勉強会を隔月で実施しています。外国人雇用の先進的企業から話を聞いて、外国人雇用について学んでいこうというものです。3つめは「政策提言」です。入管と仲良くケンカしようと。在留資格を作っただけではダメで、日本語教育、住環境、スキルアップについてもしっかり考えていかなければいけないと思っています。働いてもらうだけはなく、彼らをもっと戦力化していかなければならない。そのための「政策提言」を行っています。この3つを通して、優秀な外国人の方たちが活躍できる社会を作っていきたいと考えています。

外国人を雇用することでマネージャーのマネジメント能力もアップ

――外国人採用している企業様のエピソードなどを教えていただけますか?

竹内 私が代表を務めるグローバルパワーは外国人を企業様にご紹介、派遣する仕事をメインにしています。とりわけ弊社が運営する外国人向け求人サイト「NINJA」は、外国人が利用する求人サイトナンバー1に選ばれました。企業様からは、外国人人材を採用してよかったという声を多数いただいています。たとえば、中国人客が多いホテル様からは、中国人人材を採用したところ、多数の中国人観光客のお客様により良いサービスが提供でき、売上拡大につながったとのお声をいただいています。チェックイン/チェックアウト時に大勢の中国人客が集まるとたいへんなことになります。そこで、中国人と日本人のカウンターを分けてチェックインを行うことにしたところ、中国人はもちろんですけれど、日本人にも評判が良いホテルになったそうです。

ある小売店様からは、外国人人材を採用した当初は、店長は「面倒だ」と感じていたと率直なお声を聞かせてくれました。それはそうだと思います。小売の場合は、販売員として「接客」を行えるレベルの言語習得、振る舞いを教え、戦力化しなくてはならないのですから。それでも店長は、一生懸命教えたそうです。その結果、外国人人材はもちろん、店長のマネジメント力も上がったそうです。日本人を教える際には、「見て覚えて」でも通用したんです。マネジメントしなくてもなんとかなっていた。それが外国人の部下ができると、しっかり向き合い、マネジメントしなくてはならない。すると自ずと、マネジメント力が上がるんです。

グローバルパワーでは、外国人人材を採用していただいた後、いくつか具体的なアドバイスをさせていただくこともあります。たとえば、中国人同士で休憩室にいる場合は中国語を使わせないほうがいいですよ、といったことです。理由としては、休憩室で中国人同士が大きな声で中国語で談笑していると、他の休憩室にいる日本人が自分のことを話しているんじゃないか、自分が笑われているんじゃないかと変に勘繰り、日本人と中国人スタッフの間に亀裂が生じてしまうこともありうるからです。だから中国人のスタッフには、「こういう理由があるから日本語使いましょう」と提案する。日本語の練習にもなりますしね。

もうひとつ、日本語の間違いを指摘する際にはしっかり指摘しましょうというアドバイスもします。単純に「うまいね」とかでごまかさない。なぜなら、たとえば販売員として働きに来ている外国人スタッフは、日本人販売員のように日本語を話し、日本人販売員のように振舞えるようになりたいと思っている方が多いんです。言い回しが変だったり、助詞が間違っていたり、発音が間違っていたとしても、「外国人だから、まぁ、いいか」という感じで流してしまいがちなのですが、そうすると彼らのモチベーションも落ちてしまいます。「こういうふうにしたほうがいいよ」と優しく指摘してあげれば、本当に喜ぶと思いますよ。

外国人には「次世代型日本人」になってもらいたい

――企業で外国人スタッフを雇用する上で反対する従業員も出てくるかと思います。その従業員を説得するにはどうしたらいいと思われますか?

竹内 やはり経営者が「なぜ、外国人を受け入れることが必要なのか」を現場にしっかりと伝えなくてはいけないと思います。先ほど例に出したように、たとえば店長レベルでは「なんでこんなに面倒なことを押し付けられなきゃいけないんだ」と思っていますから。トップが、日本の将来は生産人口が減り、企業を継続させるのが難しくなるということを従業員に知らせなければならないんです。だから「外国人の人達にも一緒に働いてもらおうよ」と伝えることが重要です。

もうひとつ、直属の上司がしっかりと外国人スタッフに向き合い、教え、コミュニケーションをとれば、組織も強くなりますし、売上も上がります。 採用担当者は、「今は大丈夫、来年もまぁ、何とかなる」と短期的な見方をしがちです。しかし経営者は10年後、20年後と長期で考えなくてはなりません。生産年齢人口で言えば、 2030年で4人のうち1人が消えていくわけですから。たった12年で25%減少するという事実を、今一度考えていただきたいですね。

当協議会の梅澤高明副会長はよくおっしゃっています。「人がやらなくていいことはAIやロボットにやらせましょう。人がやるべきことは当然、シルバーでも『外国人』でもできるようにしましょう」と。正直な話、外国人人材を受け入れたところで、日本の人口減少は止められないことは明らかです。だからと言って、何もしないでいてはもっとたいへんなことになる。我々も、外国人であれば誰も彼も受け入れることはオススメしません。「日本が好き」で「日本で頑張りたい」という人たちを受け入れたいのです。

余談ですが、2016年からベトナムは第一外国語を日本語にしました。小学生の子どもたちが、日本人が英語を学ぶように日本語を学んでいます。10年後、日本語がうまいベトナム人が必ず増えます。ベトナム人をいかに活用するかは日本の企業側にかかっていると思います。ベトナム人はお国柄としても優しい人が多いですし、真面目な人も多いんですよね。

――最後に今後の展望を教えてください。

竹内 当協議会では、日本で質の高い外国人人材が活躍できるような社会になればいいと、それだけを思って活動しております。堺屋太一会長は、「次世代型日本人」になってもらえる外国人を受け入れていこうと言っています。そのためには、まず、当協議会の会員企業様がもっと増えてほしいと思っています。会員数が増えれば、もっとさまざまなことにチャレンジできますし影響力も大きくなりますから。ぜひ「外国人雇用協議会」で検索していただき、「入会申し込み」をしていただけたら幸いです(笑)。