元メルマガ担当者が語る メール配信システムの上手な活用法

 LINEをはじめとしたSNSの普及により、ユーザーとのコミュニケーションは大きく変わりつつある。とはいえ、以前から活用されていた「メール配信」をすっかりやめてしまったEC事業者は、まだまだ少ないのではないか。これからEC事業者はメールをどのように活用していけばいいのか。どういった場面でメールが効果的なのか。今回は、1,200社以上が導入しているメール配信システム「Cuenote FC」の運用・開発を行うユミルリンクより、舘田みさきさん、五十嵐崇之さんに話を聞いた。実はこのおふたり、かつてはCuenote FCのユーザーだったそうだ。

EC-zine(2018/04/25)より

月間36億通を配信! Cuenote FCの強みは「スピードと確実さ」

―――まずはユミルリンク様の事業概要と、舘田さん、五十嵐さんの担当業務からお聞かせください。

五十嵐 当社は1999年に創業し、2018年の今年で19年目になりました。元々はシステム開発などを行っていたのですが、現在は「Cuenote FC(キューノートFC)」を中心としたメール配信システム、アンケートシステムの開発や販売、それに付随するネットワークの保守・システム開発などを主な事業として行っています。

舘田 私も五十嵐も、Cuenote FCを検討しているお客様のお問い合わせ対応などを主に行っています。検討を始めてから導入していただくまでは、大体3ヶ月から1年ほどかかるのですが、その期間をサポートする業務です。

左:ユミルリンク株式会社 舘田みさきさん、右:同社 五十嵐崇之さん

―――メール配信システム「Cuenote FC」には、どんな特徴があるのでしょうか。

五十嵐 いちばんの特徴は、メールを高速で確実に送ることができる点です。当社から配信されるメール通数は月間36億通、1時間あたり450万通ほどです。ECサイト運営で会員数が1,000万を超えるお客様もいらっしゃいますので、メールの配信スピードには特にこだわっています。

舘田 確実に届ける、という部分にも気を配っています。当社では、配信スピードを保つために、毎日開発担当者が手作業でチューニングを行っています。

五十嵐 通信のルールって常に変わるんです。大手プロバイダーさんと地方ケーブルテレビさんの回線では受け取れる情報量も異なります。

とは言っても、性能がよくても使いにくいメール配信システムでは意味がありませんので、初めて使う方もマニュアルいらずで操作できるよう、UIの開発を行っています。現在は沖縄にUI専門チームを置いて、ユーザビリティの向上に取り組んでいます。

―――お二方は前職でCuenote FCを利用していたと伺いました。その当時の印象はいかがでしたか。

舘田 最初はCuenote FCではないツールを使用していましたが、その中で特に気にかかっていたのは「データの取り込みにかかる時間」です。当時は数十万件ほどのデータを扱っていたのですが、インポートするのに丸一日かかってしまうこと、多くの人を割かなければいけないことに課題を感じていました。それ以外でも、効果測定のためのデータ抽出はできても、データを整える作業は手動でやらなければいけないなど、そういった部分から解放されたいという思いから、Cuenote FCを導入しました。実際に使ってみた最初の感想は、「インポートが早い」。データを取り込むスピードが段違いに早かったです。

ステップメール配信で重要なのは「起点をどこにするか」

――そんなユーザーだったおふたりがCuenote FCで重宝していた機能や、上手な活用法はありますか?

舘田 私はスピード制御機能をよく使っていました。Cuenote FCは、配信できるメールの通数を指定したり、配信速度を調整することが可能です。

前職でアフィリエイト系サイトのメール配信を行っていたのですが、一気にメールを送り、何十万もアクセスが重なるとサイトがパンクしかねないので、配信開始からサイトの監視にも数人充てていました。ですがこの機能を使ってスピードを落とした状態で配信を行えば、サイトへのアクセス殺到を避けることができるため、監視体制も厳しくなくなりました。

五十嵐 メールが届く時間を指定できる機能にはとても助けられました。CuenoteFCでは、この時間からこの時間だけにメールを配信してください、という設定ができるんです。逆に言うと、届いてほしくない時間を設定できるということです。

一時的なサーバーの混雑などでメールが1回で届けられないことがあり、そういった場合自動でシステムがリトライを試すので、18時に送ったものが21時に届いてしまう、ということもあります。そのメールの遅延がクレームに繋がる可能性もありますよね。

ですがCuenote FCだと、たとえば朝9時~18時以外はメールが届かないようにしてください、という設定ができる。それ以外の時間に届くメールは、自動で翌日に回るようにすることができるんです。

舘田 使い方でいうと、ステップメール配信もぜひ活用していただきたいですね。ステップメールは、購入日や初回コンタクトの日などを起点にして、顧客へメールを自動で配信できる仕組みです。

たとえばベビー用品を扱っているECサイトだと、オムツはずっと同じ銘柄のものを購入するという方もきっといらっしゃいますよね。大体2週間ほどでオムツを1パック使いきる人が多い、というデータが取れていれば、そのタイミングにあわせて購入を換気するというのも効果的です。

この場合だと購入日が基準になりますが、会員登録時にお子さんが生まれた日を登録してもらえば、生後5~6ヵ月を迎える頃に「そろそろ離乳食が始まる時期ですね。このような離乳食グッズがありますよ」というご案内を送ることもできます。起点をどこにするのかによって、案内できる商品の幅を広げることができると思います。

「使い方次第でダッシュボタン以上の効果を及ぼすことができる」Cuenote FCの可能性

――Cuenote FCのようなメール配信ツールを選ぶ際の判断基準や、活用時におさえておきたいポイントについて教えてください。

舘田 「メールを使って何をしたいのか」。そこをブレずに定めることがいちばん大切だと思います。まずはメール配信そのものに力をいれていきたいのか、それともマーケティングのひとつの手段としてメールを活用したいのか。自分たちがこれから取り組んでいきたいことをきちんと定めることが、最適なツールを見つけるための第一歩だと思います。

五十嵐 どんなツールを使うかに関わらず気をつけなければいけないのは、「配信自体が目的にならないようにすること」です。メール配信専任のスタッフがいるケースより、さまざまな業務のひとつとしてメール配信を行っていることが多いと思います。そうなるととりあえず「配信すること」が目的になってしまいがちです。

ですがメール配信においても、目的や目標数値などをしっかり設定し、施策を行っていくことが重要です。メールマーケティングはPDCAを早く回せるところも大きな利点ですね。実際に検証を繰り返しながらメールを送る時間や件名の最適化を行った結果、サイトのデイリーアクティブユーザー数が2倍以上増加したり、レコメンドシステムと連携を行い、お客様の嗜好にあった内容のメールを配信し、サイトのクリック率が4倍近くアップしたという例もあるんですよ。

――今後のCuenoteFCの展望を教えてください。

五十嵐 2016年12月に発売されたAmazon DashButtonはすごい発明ですよね。なくなりそうなときにポチっとボタンを押せばその商品が配達されるというのは、非常に新しい仕組みだと感じました。

ですが、私どもが提供しているメール配信システムやステップメールの仕組みなども、使い方によってはダッシュボタンに近しいことができるのではないかと思っています。こちら側の分析をもとに適切なタイミングを見定め、先手を打つようにメールをお送りする。さらに、そこにおすすめしたい商品の情報を加えることで、ダッシュボタン以上の効果を及ぼすことができるツールにもできるはずです。

そのためにも、企業がやりたいと思ったことを実現したり、さまざまなサービスとの連携をシステムとして手間なくできるようにしていきたいですね。メール配信だけでなく、さまざまなチャネルを通じて、企業とユーザー間の良質なコミュニケーションを行えるクラウドサービスを目指します。

LINEやFacebookをはじめ、SNSでのコミュニケーションが多様化してきたことで、「メールってまだ効果があるの?」という質問をいただくこともあります。ですが、メールはタイムラインに流されることなく、一定量の情報を確実に届けることができる点で、変わらず貴重なツールだと思っています。メールマーケティングでこれだけのことができるということも、EC事業者をはじめ多くの方に伝えていきたいですね。